ゆ
ゆんさん (7ps93y7h)2020/11/19 21:00 (No.61467)削除【若月初の話】
極々普通な人として僕は産まれた。
親も、先生も、友達も優しかった
それは、いつ、どんな時でもそうだった
いつしか人として立派で素晴らしい人だと言われるようになったのは僕の周りに居たありとあらゆる素晴らしい人達のお陰だった。
人の出会いに恵まれていた僕は幸せだ。
ある時僕には異能力という物が目覚めた。
親は僕に力があるとしても気味悪がったりしなかった。
能力があっても親や友達は変わらなかった。
受け入れてくれた。
この時、僕は周りの人達に再び感謝した。
それは、とても嬉しい事だった。
ここまでは、彼が主観の過去の話。
ここからは、彼が忘れてしまった過去の話。
「初って、礼儀正しくってまるで紳士みたい!」
「えっ?」
彼が紳士になりたいと思ったのはこの時だった
ほのかに甘く淡い純愛を持つ相手に褒められて
その人が素晴らしいと称えるような人になりたいと思った。
「素晴らしい紳士になってみせるよ!」
「うん!約束ね!」
ほのかに甘い、それでも真剣な約束をその少女とした
けれど、
彼女は死んだのだ。
原因は交通事故だった
彼が来たときには遅かった
「嘘だ。ねえ、生きてるんでしょ?起きてよ、起きて、また一緒に話そうよ。ねえ」
そう信じたくない事実を心の中で捻じ曲げて握った手は
人間には大事な何かが無くて、冷たかった
「なあ初。*が居なくなっちまって悲しく無いのか?」
それに触れるのは良くないことだと思ったがこのままにしておけないと思った友人が声をかけた
「*?えっと、それは誰だい?申し訳ないけど僕は知らないよ…?」
「は?」
「ごめん、本当にわからないんだ……」
「はっ!?いや、あんな!お前っどうしたんだよ!?」
彼は彼女の関する全ての記憶を忘れてしまった。
紳士になるという約束だけを覚えたまま……
「紳士になりたいとは思うけど、何故紳士になりたいかは忘れているんですよね。願うなら、いつか思い出せたら良いなと思います。」
だが彼は知らない。
それを知ることがどれだけ悲しいことか
「大切なことを、忘れている気がする」